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秋田と東京で手を取り合いながら紡ぐ、地球と人に優しい母と娘のものづくり「Kanaho」のマスク

天然素材に手染めをした下着や小物のお店「Kanaho」。秋田県鹿角市で制作をおこない、webショップにて販売をされています。生産販売をされているのは、母・中西 良子(なかにし りょうこ)さんと娘・瀬川志暢(せがわ しのぶ)さん。全体をディレクションしているのは娘のあつこさん。母娘三人でのものづくり。天然素材にこだわる理由、そしてmeetoomaskプロジェクトに参加し、感じたことをお聞きしてきました。

※この取材は、コロナウイルス感染症の影響を考慮し、オンラインでおこなっております。また、写真につきましては、以前撮影されたものを掲載させていただいております。

「meetoomaskプロジェクト」とは

「今を守り未来を作るプロジェクト」
ただ物を作り伝統だから残す、ではなく本来未来にあって欲しいモノコトヒトを今から残して行こうよというプロジェクト。子供達が暮らす未来を作るのは今の大人。

天然素材だからこそ感じられる、心地よさ。そして、だからこそ完成した立体マスク。


布を染めるのは、娘しのぶさんの仕事。少しずつ、少しずつ、色が入っていくことに自然を感じるのだとか。

―母りょうこさんと娘のしのぶさんのお二人でものづくりをおこなっておられるそうですが、役割分担など実際はどのようにおこなっておられるのでしょうか。

瀬川しのぶ(以下、しのぶ):「Kanaho」というお店で、天然素材を使った小物や下着を母と2人でつくり、販売もしています。形やデザインを考えたり、生地を染めたりするのは、私の担当。仕立ての仕事を長年やっていたこともあって、母には縫製の部分をやってもらっています。
中西りょうこさん(以下、りょうこ):しのぶから言われたときは、何が何だかよくわからなくて。今まで自分がやってきたものよりかは、簡単にできるはずだけど、難しく考えすぎて縫製を引き受けることをためらっちゃって。でもまぁ、一度やってみたらできちゃったんですね。今は、楽しくやってます。お客さんからは、「着ていて気持ちいい」「ポリエステルが着れなくなりました」「温かみが伝わってくるし、ずっと触っていたい」といってもらえていて、うれしいです。
しのぶ:素材である綿や麻というものから大地のエネルギーが伝わってくるからこそ、そう感じるのだと思います。だから、自分は自然と一体なんだ、自然の一部なんだって感じられるんじゃないかな。染めるときは少しずつ少しずつ、何回何回も色を重ねて染めていきます。その、少しずつ入っていく色にすごく感動するんですよ。自然の色、が感動的で。染めている間もゆったりとした気持ちになれるし、誰からも邪魔をされない、いらない思考が外れていく。そんな感じです。

それぞれの経験を経て、気づけば同じものづくりの道へ


母、りょうこさんのミシンがけ。誰もいない、静かな作業部屋でおこなうのだそう。

―お二人とも布を使って何をつくるということをされていますが、ものづくりをするようになったきっかけを教えてください。

りょうこ:子どもの頃から、「何かつくりたい」って気持ちがあったのかな。出身は秋田なんですけど、昔東京に住んでいたことがあってね。その時に洋服の仕立て屋で見習いみたいな感じで働いていたんです。神田の問屋さんで生地を選んで、お客さんと話ながらデザインを決めて、オーダーでスーツを仕立てる。その頃に縫製の技術を学び、結婚を機に秋田に戻ることになって。でも、服をつくったり縫製したりするのが好きだったから、ちょっとした作業部屋みたいなのを用意して看板もない状態でオーダーの仕立てやお直しを受け始めたんです。
しのぶ:私が小さい頃は、母がつくった帽子とかワンピースとか着てましたよ。ほんと、自由な人ですからね。人に縛られることもなく、縫いたいときに縫っているような人です
りょうこ:いやいや、そんなこともないよ。笑
しのぶ:そうかな。笑 私は、結婚して長女が生まれた頃に、謎のアレルギーになってしまったんです。原因もよくわからなかったので、いろいろ調べていくうちに自然素材がいいんじゃないかって考えるようになって。食べるものや身につけるものを見直していったら、少しずつ治っていったんです。それから「自然素材」というものに興味を抱くようになり、オーガニックの食べ物を食べるようになったり、綿や麻の服を着るようになって。そんなとき、友達から偶然布ナプキンを見せてもらい、そのときに「あっ、これだ!自然素材を使ってものづくりをすればいいんだ!」って気付いたんです。その後に染めを始めたんですけど、それは妹がきっかけ。あるとき、妹と一緒にベンガラ染めの体験会に行って、そこからベンガラ染めにはまりました。母もまだまだ仕事はできると言っていたので、母の技術を活かしつつ、何かできないかなとも思っていたので、母と2人でKanahoを始めたんです。

こだわりの縫い方と仕上げの丁寧さが素材の良さを引き立たせてくれるマスク


Kanahoのマスクたち。母娘でつくることで生み出される、温かみ。

―metoo maskプロジェクトに関わるようになったのは、どういうきっかけからだったのでしょうか。

しのぶ:妹からmetoo maskの話を聞いて、ワクワクを感じたので参加してみることにしたんです。ただ、母は洋服とかサイズの大きいものをつくるのは好きならしいんですけど、細かい作業は好きじゃなかったみたいで。「マスク、なかなか難しいよ」「そう言わずに困っている人がいるから。この生地でこうやってつくって」なんて押し問答を繰り返してましたね。
りょうこ:それはあったね。つくるって決めたら「あれっ、できるじゃん」「楽しい楽しい」ってなって、どんどんのめり込んでいっちゃって。ただ、しのぶは「あと0.5mm、1 mm短く」とか、チェックが厳しいんです。アイロンかけるんだからそんなのあんまり関係ないって言っても「それじゃだめだって」と言われたり。でも、そのおかげで良いマスクができたんだとは思いますよ。
しのぶ:こだわった方が良いものができるじゃないですか。生地は、麻を使ってます。ダブルガーゼのマスクもあると思うんですけど、ダブルガーゼだと生地が動いてしまって形が変わってしまうんですよ。麻素材の方が縫いやすいって母が言っていて。つくる人も使う人も気持ちいい素材は何かなって思ったとき、麻の生地だったんです。
りょうこ:スカートでもワンピースでも、素材は麻。麻だったら縫えるよって言ったの。マスクもその通り。麻は着ていて、触っていて、気持ちいいんですよね。いつの間にかは、服は麻素材のものしか着ていなかったりして、自然と自分が麻素材を選んでいるっていうことは、麻が好きなんなのかなと。
しのぶ:麻は、抗菌性もあり、軽いので体が楽だし、機能が素晴らしいんです。実際、着ていて気持ちいい。乾きも良いのでKanahoのマスクも夜に洗うと朝には乾いているし、変な臭いもしないんです。また、ワイヤーは入れてないんですけど、入っているみたいに形が崩れないので「呼吸がしやすいし、話しやすい。付けていて気持ちいい」とお客さんから聞くことが多いです。あと、洗っても洗ってもへこたれない。多分、麻という素材であることと、縫い方で立体的になってるんだと思います。

―Kanahoのマスク「HEMP素材の立体マスク by Kanaho」は、立体感がすごくあるというか。縫い方で立体的になっていて、素材のおかげでより立体がキープされているって感じがありました。その立体は、母りょうこさんのこだわりの縫い方と仕上げの丁寧さ、素材の良さなのだと。マスクを送ってもらうときも、通常だと半分に折られて送られてくることが多いのですが、Kanahoのは違いましたよね。

しのぶ:一つひとつ、自分たちで縫っていますし、両端をアイロンがけして、開いた立体のまま重ねて送りましたね。あと、なかなか色が生地に入らなくて。笑 2、3回重ねて染めているんですけど、それでも色が入らなくて。だけど重ねている分、何回洗っても色落ちしないと思いますよ。ベンガラ染めという染め方で染めていますが、この染め方って色落ちしづらい染め方なんです。マスクって何度も洗うだろうなって思ったので、あえてその染め方にしたっていうのもあります。

―作り手が楽しみながらつくっているからこそ、使う側にもそれが伝わるのだと思います。だから、使っていて心地よくなる。これからは、どんなものづくりをしていきたいと考えておられますか。

りょうこ:まだまだ、やれますよ。やっていて楽しいですからね。
しのぶ:やっぱり体に良いものをつくっていきたいですし、突き詰めていきたい。使ってくださる方からうれしい言葉をいただけると、やっててよかったって思いますし、続けていきたいなって思います。なので、細部にもこだわりつつ、これまで通り天然素材を使ったものづくりをしていきたいと思っています。

後書き

母娘でものづくりをされている三人。それぞれの良さを活かすことでKanahoのプロダクトができています。そして、天然素材にこだわり、丁寧な縫製とつけ心地を考えたデザインだからこそ、伝わる感覚や心地よさが生まれるのだと思いました。

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  • 瀬川 志暢/ Shinobui Segawa kanaho代表

    長女の出産と、自分のアレルギーをきっかけに、自然素材や自然療法、環境問題に興味を持ち始める。自然素材を身につけるようになり、その心地よさを知り、長年洋裁をしてきた母と一緒にkanahoをスタート。

  • 中西 良子 / Ryoko Nnakanishi 縫製担当

    昭和46年、秋田県鹿角市の服飾高等女学院卒業後、上京。門前仲町の洋裁店で2年間見習い。地元秋田県鹿角市に戻り、洋裁店勤務。昭和50年結婚。長女が生まれたタイミングで自宅敷地内にオーダー専門店をオープン。主にワンピース、ツーピース、スーツを仕立てる。

  • 西野 愛菜/ Mana Nishinoライター

    京都生まれ京都育ち。学生時代、「想いのしおり」という職人さんの想いを発信するフリーペーパーの代表兼ライターを務める。京都美術工芸大学卒業後、編集者として日々奮闘中。